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Cast >>O.J. Simpson (archive footage) ...
Director >>Ezra Edelman
Writer >>
Producer >>Caroline Waterlow, Ezra Edelman, Connor Schell, Libby Geist, Tamara Rosenberg, Nina Krstic, Deirdre Fenton, Erin Leyden
Genre >>Documentary
Country >>USA
Release (US) >>06 / 11 / 2016

 総合ポイント 5点/5点満点中
内容 >>5 演技 >>5 演出 >>5 音楽 >>5

 レビュー
Torn between two races
サンフランシスコの黒人コミュニティに生まれ育ったOJ・シンプソンことオレンサール・ジェームス・シンプソン。大学では華々しい活躍をみせ、チームを優勝にまで導き、大学フットボールで一番名誉であるハイズマン賞にも輝いたヒーローだった。NFLにも鳴り物入りで入団し、1973年には2000ヤードというとんでもない記録を作った男。当時の黒人ではなかなかたどり着けなかった有名会社のCMにまで登場し人気となった。引退後は映画にテレビと華々しい世界に居続けたOJ。しかし一方で、その名声が彼を少しずつ蝕んでいく。若干18歳だったニコール・ブラウンとクラブで出会い不倫。彼の名声は女性に暴力を振るうことまで許されてしまった。転落していく人生。そしてついに、1994年に事件が起きる。ニコールと友人が何者かに殺された。容疑者はOJ・シンプソン...

圧巻の7時間半。普段映画が2時間を超えるだけでも文句を言う私には、かなりの忍耐力が必要だと思われた。しかし、始まってから数分でもっと見たい!もっと見たい!と中毒性を帯びていた。1994年以降、OJ・シンプソンの映画を撮るとなると、やはりあの裁判が中心になってしまう。それは仕方のないことだ。そしてOJはアメリカの司法制度まで覆した妻殺しのモンスターと描かれるのが通常だ。けれど、OJには華々しいフットボール時代がある。私が生まれたころにNFLで活躍していたので、OJの実際のプレーに触れることは今までほぼ無かった。OJのアスリート的な凄さは、あの『ルーツ』での走りしか知らない。今回、フットボール選手としてのOJをたっぷりと見せてくれたが、想像以上にすごい選手だった。そして大学時代のOJは、とても謙虚で受け答えもしっかりしている。そんなOJは白人社会に受け入れられた。それを知っていたOJは、黒人コミュニティとは少し離れていたのだ。そこからあの裁判の物語は始まっているのだ。しかし他の映画ではそこは描かれない。当時勃発していた黒人が抱えた問題には足を踏み入れなかった。しかし、1994年の事件が起きたとき、OJがいたロサンジェルスの街は白人と黒人で真っ二つに分裂していた。ロドニー・キングとラターシャ・ハーリンズ事件によって勃発したLAでの蜂起(普通は暴動と書かれますが)。黒人側はこれ以上はもう許さないと、スーパースターでヒーローのOJに望みを託した。それはいつしか、OJの裁判ではなくて、ロサンジェルスの裁判になっていたと映画は語る。

黒人奴隷時代から黒人の間で言われていたことは、白人女性が何者かに殺され、その容疑が黒人にかけられた場合、黒人は10人は死なないといけないと言われ続けてきた。ニコールがあのように無残に殺され、容疑がかけられたOJ。OJは死なないといけなかったのだ。タイトル通り、OJはアメリカの産物である。いやアメリカの恥部の産物。OJは2つの人種に利用され、そして両方によって引き裂かれた男。OJはいま、生き地獄を彷徨っているのだ。
(Reviewed >> 10/3/16-10/5/2016:DVDにて鑑賞)

 100本映画
これは本当に凄かった。まずOJ・シンプソンで7時間半というのも凄いが、その内容・まとめ具合が本当に凄い。まあこういう映画の感想で「凄い」と書いてしまうのは、余りにも語彙が未熟て一番何も伝わらない言葉だというのは、さすがの私でも重々に理解しているが、この映画は「凄い」という言葉ばかりが出てしまう。911のような大きな出来事の前と後は明らかに違うので、Pre-911とかPost-911とかいう言われ方をするが、私の場合はこのPre-OJ:Made In AmericaとかPost-OJ:Made In Americaと言ってもらっても構わない。それ位、私にインパクトを与えてしまったのだ。

というか、日本人にとってOJ・シンプソンは、良くて映画俳優、悪くて妻殺しの容疑をお金で潰したモンスター...という印象であろう。OJ・シンプソン(以下OJ)がアメリカンフットボールで活躍した事は文字では知っているけれど、実際にTVでもいいから見たという人は意外と少ないんじゃないかと思う。私もその1人。VTRで少し見た程度。なにせ私が生まれた頃にNFLで活躍していた人なので、バリバリのNFL現役時代やその前の大学時代はリアルタイムで知る由もない。ちなみにこの映画を観る前の私のOJの印象は、『Roots / ルーツ (1977) (TV)』での物凄く早くてそして美しい走りが一番印象に残っている。そして例の裁判の事は、やはり手袋がハマらなかったので無罪になったという印象しかなかった。そして今年に入ってから放送された『American Crime Story / アメリカン・クライム・ストーリー (2016-Present)』のThe People vs O.J. Simpsonで、色々な事を知ったばかり。この映画はOJが人々に知られ人気が爆発した大学時代から事細かに歴史の紐をといていく。とはいえ、OJの高校時代からの友人もインタビューに答え、OJが生まれ育ったサンフランシスコの黒人ゲトーでの話、そして更にはOJの祖先が南部からサンフランシスコに落ち着いた話までと、包括的にOJという人物が語られている。特に、高校時代の友人のインタビューは必見。OJがLAでカーチェイスをした時、運転手となっていたのが、OJの友人AC事アル・カウリングス。そのACとOJの関係を高校時代の友人はあるエピソードを交えて語っていた。それはもう鳥肌ものでしたよ。友人、声はカスカスでしたけど。まあこういう部分はさすがの『American Crime Story』では語られていないので、必見ですね。後は、今現在OJが刑務所生活している原因となった強盗事件で、「前に盗まれたOJのメモラビリアを持っている奴を知っているよ」とOJをそそのかした男トム・リッシオもインタビューを受けている。「OJをセットアップしたかだって?あはは、したよ!」と答えていてゾッとした。

もちろんこの映画では、一番の被害者はニコール・ブラウンとその友人である事をちゃんと示している。彼らがどのように無残に殺されてしまったのか...1994年以降、ずっと様々なメディアで語られてきた事だけど、今までで一番明確にそして視覚的にも具体的に語られている。メディアによって囃し立てられ、そしてあのような結果になってしまった事は、やはりニコールと友人が一番悔しいだろう。まだ子供である18歳でOJに出会ってしまった事が悲劇だ。

それにしても、OJがLAを離れマイアミに移動した事が悲劇の始まりで、それについて誰だか忘れたけどインタビュー受けた人が「OJの取り巻きが代わってしまった。LA時代のロジー・グリア等がいなくなったのが悪夢の始まり」みたいな事をサラりと言っていた。それまで全然OJとロジー・グリアの関係について語られていなかったので、「え!?」ってなった。2人は仲良かったんだ!!あ、ロジー・グリアとはOJと同じく元フットボール選手で、後に映画俳優になった人。ブラックプロイテーション時代の『The Thing with Two Heads / Mr.オセロマン/2つの顔を持つ男 (1972)』が超カルトですね。パム・グリアの親戚という噂で、ロバート・ケネディ暗殺時に犯人を取り押さえた1人。そして刺繍家(パンダの刺繍が得意)。ロジー・グリア凄くない?OJを抑えていた人だったなんて!グリアは例の裁判の時にも証言者として出廷しているんだよね。OJが刑務所に居た時に、グリアは聖職者としてOJの所に聖書を読みに行っていた。その時にOJが殺人の告白をしたのを聞いたと看守が証言し、グリアも出廷して「聖書の話をしていただけだ」と証言している。実は昔にロジー・グリアにファンレターを書いたら、丁寧に「今、写真がないのでサインだけでごめんなさいね」という手紙を添えてくれて感動した事があります。ロジー・グリア大好き。

話が飛びましたが... やっぱり人をちゃんと描こうとしたら、この位の時間は掛かってしまうものかもしれません。特にOJ・シンプソンという数奇な運命を辿っている男は。OJは、あのカーチェイスの時に自殺しようとしていたけれど、みんなの説得で何とか自殺しないで済んだ。だけど、今OJが生きている世界は地獄。きっとあの時に有罪になって罪を償っていた方が被害者や被害者の家族だけでなくOJにとっても良かったのかもしれない。私にとっては、色んな事がハッキリとこの映画を通して分かったので、かなり怖いのです。色々と。

 トリビア
アメリカンフットボールの超スーパースター選手でありながら、引退後は映画にも進出したO.J.シンプソン。90年代には妻とその友人の殺人事件の容疑者として世間を騒がせた男を追う。スポーツ専門チャンネルESPNの人気ドキュメンタリーシリーズ『30 for 30』にて5夜に渡って放送。全部で7時間30分もある長編ミニシリーズ。サンダンス映画祭でプレミア上映を果たす。監督はスポーツドキュメンタリーを取り続けているエズラ・エデルマン。

 その他

 受賞歴
* The BEST OF SOUL
2016 映画秘宝 私が選んだベスト10 2016年度1位
2016 Won Best Movie of the Year (Documentary)

* Academy Awards, USA
2017 Won Best Documentary Feature

* Critics’ Choice Documentary Awards
2016 Won Best Director (Theatrical Feature) : Ezra Edelman
2016 Won Best Documentary Feature
2016 Won Best Limited Documentary Series
2016 Won Best Sports Documentary

* Directors Guild of America, USA
2017 Won Outstanding Directorial Achievement in Documentary :P Ezra Edelman

* National Board of Review, USA
2016 Won Best Documentary

 サウンドトラック


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* 映画秘宝 2017年6月号にてブラックムービー最前線に本作について寄稿。(4/21/17)

 リンク
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 インフォサイト
http://www.imdb.com/title/tt5275892/
https://en.wikipedia.org/wiki/O.J.:_Made_in_America
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Last Modified: 2016-06-16
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