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●● レビュー La Familia保護観察中のミクロ(ダミアン・チャパ)は、ラスベガスから故郷ロサンジェルスのイーストLAに戻ってきた。後6日で18歳となり保護観察も終わる事になっていた。ミクロは暴力的な白人の父とは疎遠で、ラティーノの母親や母方の従兄弟と親交を持ち、見た目はブルーアイの白人だが、ラティーノとしてのアイディンティを大事にし、従兄弟パコ(ベンジャミン・ブラット)がリーダーのラティーノギャング集団ヴァトスに所属した。もう一人の従兄弟クルス(ジェス・ボレッゴ)は絵の才能があり、学校の奨学金も手にしたが、ヴァトスとライバルギャングのイザコザで暴行を受けて負傷する。パコとミクロのヴァトスは仕返しをし、ライバルのリーダーを殺してしまう。逃げるが捕まり、保護観察中だったミクロだけは、悪名高いサン・クェンティン刑務所に送られ、そこでもやはりラティーノギャングのラ・オンダに所属する為に、あるミッションが言い渡される... 刑務所内にある人種間の緊張感を描いた秀作。主人公を白人とのミックスにしたのも面白い。ラティーノからも、仲間はずれにはされるが、自分のアイディンティを主張し、たくましく生きていく。主人公はラティーノの環境で自分を主張しようとする余り、道を誤る。しかしその状況を愚痴る事はない。逆にラティーノであるパコは、その反発で道を正し、そのラティーノのコミュニティの環境まで正そうとしていく物語が巧すぎる。そして3人の若者たちのそれぞれの生き方も面白い。 ラティーノギャングのリーダーがはっきりと「白人こそがシステムだ」と主張する。実際に刑務所内のシステムは白人に支配されている。年1回の豚肉の日に、黒人は脂だけを与えられ、ラティーノに至っては何も至急されない。黒人と団結し、そのシステムを打開していくのだと。しかしミクロはそれに反発する。血を流し結束した「家族」と、本当に血がつながった「家族」の間で、ミクロは驚きの結論を出す。 ここで描かれた「家族」の姿に、考えざるおうえない。「家族」とは何なのか?結束とは何なのか? (Reviewed >> 7/13/12:DVDにて鑑賞) |
●● 100本映画 黒人が主役でもないし、黒人の監督でもないけれど、ここで描かれた黒人の姿もまた面白いかなと思い、紹介します。主役はLAの東側イーストLAに住むラティーノ系の若者3人。古くはワッツ、今ならコンプトンやイングルウッド、逆に黒人のビバリーヒルズといわれているボールドウィンと言えば、日本人でも知っている黒人コミュニティ。イーストLAと言えば、ラティーノの有名なコミュニティ。今では住民の人口の99%がラティーノ系だというから、その密度は凄まじいものがある。そこで育った3人の若者。パコはリーダー的存在。地元のギャングヴァトスでもリーダー。その腹違いの兄弟がクルス。絵の才能があり、奨学金も貰った。そこに帰ってきたのが、従兄弟のミロ。彼の母親がラティーノで、父親が白人。見た目はブルーアイの全くの白人。しかし、父が暴力的な虐待者だったので、白人としてのアイデンティティよりも、ラティーノのアイデンティティを大切にしている。ミロはもうすぐ18歳になろうとしていたが、犯罪を犯して保護観察でイーストLAに戻ってきた。ミロは自分のラティーノとしてのアイデンティティにより、パコのヴァトスに入りたくて仕方がなかった。そのヴァトスは同じ地元のプントスと対立中。クルスがプントスに襲われた事で、益々悪化。何よりも兄弟のクルスがやられた事で、パコは激怒。ミロはヴァトスに入る為に、自分の存在を証明しようとする。この闘争で3人の人生が全く変わってしまう。ミロは前科もあったので、悪名高いサン・クェンティン刑務所行き。パコは父親の言うとおり、海兵隊入り。クルスは大怪我を負うが、絵は続ける。しかし怪我のせいで薬に頼るようになっていく。 ミロはサン・クェンティンでも自分のラティーノのアイデンティティを証明しようとやっきになる。アメリカはどこだって人種で固まる。学校でも職場でも、もちろん刑務所でも。白人のアーリアン系、黒人のブラック・ファミリー系、そしてラティーノ系のラ・オランダ。ラ・オランダに入るには、血をもって証明しないといけない。それがタイトルの「Blood in, Blood Out」だった。 このミロというキャラクターを混血にした事で、このドラマに広がりを見せていると思った。元々何も証明する必要もないミロは、最初は父親から言われたからという事もあるが、ミロよりもよっぽど宿命なども感じずに、自分の人生をコントロールしている。しかしミロは宿命とか運命とかに縛られ続けた。ミロの人生はいつも何かを証明し続けていた。ラティーノのアイデンティティ、そして元犯罪者として… その間に居たのがクルス。絵の才能があったにも関わらず、間違いが彼を苦しめ続ける。その絵の才能が彼の運命を決めてしまっていた。でもそのクルスが家族をまとめようとしていたのが面白い。 で、黒人の姿ですね。黒人にとってもだけど、やっぱりラティーノにとっても「対白人」がメイン。だからこそミロというキャラクターには白人の血が流れていた。刑務所の中で黒人・白人・ラティーノという3つのパワーが存在する。しかし刑務所でも、一番のパワーを持っていたのが白人だった。年に一度の豚肉の日には、白人の料理人(囚人)が、白人には豚肉、黒人には脂身のみ、ラティーノには何も無し。そこで黒人とラティーノが組めば、白人に匹敵する力になると考えていたのが、ラ・オランダのリーダーのモンタナ。彼はハッキリと白人がシステムだと言う。実際にモンタナは黒人のリーダーと話し、組もうとする。しかしモンタナに「お前はその両者(白人とラティーノ)の間に挟まれてんだ」と言われたミロはそうは思わなかった。やっぱり証明しようとしていた。黒人は2つのパワーに使われていた。ラティーノにとっては、目の前の黒人を退けて駆け上がらないといけなかったという事。 と、まあ長くなりましたが、ひじょーに面白い映画でしたね。長いけど苦じゃなかった。珍しいよ、私2時間越えただけでも、うるさいからね。テイラー・ハックフォードがここまで上手いとは。最初のカーチェイスの所とか見せ方がさすが。それに、これまで1度もベンジャミン・プラットをカッコいいと思った事がなかったけれど、この映画ではかなりカッコいい。素敵。そして3人目のキャラとして、クルス役の人が超上手いし、彼のキャラは映画に効いてるね。 (1014本目) |
●● トリビア 黒人が主役の映画ではありませんが、刑務所内での人種関係が興味深いので入れておきます。 メキシコ系とネイティブの詩人ジミー・サンティアゴ・バカが脚本を担当。ここで使われているギャングの名前は実在しない架空のもの。サン・クェンティン刑務所内での撮影では実際に囚人達がエキストラとして参加している。ジェロニモ役のダニー・トレホは、俳優になる前にサン・クェンティン刑務所に居たこともある。 タイトルは公開直前に「Bound by Honor」に変えられた。前年度に起きたロサンジェルスの暴動や、映画「Boyz N the Hood」公開時の劇場での銃発砲事件などを受け、舞台となったイーストLAでの暴力増加を恐れた制作のハリウッド・ピクチャーズが変更した。監督のテイラー・ハックフォードはその決定に落胆した。 |
●● その他 |
●● 受賞歴 |
●● サウンドトラック Soundtracks not available |
●● 関連記事 |
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●● インフォサイト http://www.imdb.com/title/tt0106469/http://en.wikipedia.org/wiki/Bound_by_Honor http://www.allcinema.net/prog/show_c.php?num_c=20338 |
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