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●● レビュー “Darkness cannot drive out darkness, only light can do that. Hate cannot drive out hate, only love can do that.”セシル・ゲインズは綿畑で育った。母(マライア・キャリー)も父(デビッド・バーナー)もその綿畑で共に働いていた。母が監視員にレイプされた時、父は黙って見ているしかなかった。セシルは父に「どうするの?」と尋ね、父は勇気を出して監視員に言った所で、銃弾一発で殺された。それを目撃していたマスターの妻アナベルが、セシルを家の中で執事にした。そして青年になったセシルは、そのマスターの家を飛び出したが、中々職など見つからず、お腹がすいたセシルは窓越しに見えたケーキを窓を割って食べてしまう。それを見つけたのが黒人の執事メイナード(クラレンス・ウィリアムス3世)だった。そのセシルの姿を察したメイナードはセシルの傷を手当し、そして執事の仕事も与えたのだった。そしてメイナードは、自分の元にきていたワシントンDCでの仕事も、セシルに「若いんだから行ってこい」と譲るのだった。セシル(フォレスト・ウィッテカー)はDCの一流ホテルでの勤務が認められ、ホワイトハウスでの執事の仕事を得るのだった...セシルは50年代から1986年まで歴代の大統領を支えたのだった... 実在したホワイトハウスで8人の大統領に従えた執事ユージン・アレンをモデルに制作されたリー・ダニエルズの最新作。 公民権運動を大統領と主役のセシル、そして息子のルイスを通して見事にドラマに反映している。その公民権運動にマーティン・ルーサー・キング・ジュニア牧師とマルコムXという反対の世界を率いた人々がいたように、父セシルと息子ルイスは別の道を歩み始める。まるで「フォレスト・ガンプ」の黒人版のようだ。父セシルが、ホワイトハウスで行われる晩餐会で白人ばかりの出席者の椅子をひくシーンと、息子のルイスが公民権運動のシットインに参加し、じっとその椅子に我慢して座っているシーンが、オーバーラップしていく演出が素晴らしい。そして「フォレスト・ガンプ」とは少し違うのが、セシルの次男チャーリーの存在。セシルともルイスとも違うアメリカ人がチャーリーだ。 それに加えて、大統領の性格が明らかになっていくのも面白い。ニクソンはやっぱり憎たらしい人だし、ジョンソンは犬好きで言葉が悪い、ケネディはやっぱりスムースな男前。ナンシーが意外と良い人だったのも面白かった。そのゴリゴリな共和党のレーガンの妻をあのジェーン・フォンダが演じているのは、リー・ダニエルズ的ショック演出か? 主役セシルを演じたフォレスト・ウィッテカーの忍耐力と愛の見せ所はさすが。自然と号泣。そのセシルの妻を演じたオプラ・ウィンフリーの強さと愛は、時に面白くて時に切ない。息子のルイスを演じたデビット・オイェロウォの情熱と愛は、見る者に勇気を与える。そんなゲインズ家を見つめるセシルのホワイトハウスでの先輩を演じたキューバ・グッティング・ジュニアの優しい愛には、心が温まる。 アメリカの歴史の光と影、そして憎しみと愛。アメリカの公民権運動を支えたもの、光であったキング牧師やマルコムX、影であったルイスやセシルにチャーリー、そして愛であった。 (Reviewed >> 8/17/13:劇場にて鑑賞) |
●● 100本映画 今年のブラックムービーは凄い!と言われているけど、その中でも私が3大楽しみにしていた作品のうちの1作品。他2作品は、この前の「Fruitvale Station / 日本未公開 (2013)」と、秋ごろに公開される「Twelve Years a Slave / 日本未公開 (2013)」ね。いやー、期待を裏切らない作品でありました!1920年代、セシル(フォレスト・ウィッテカー)は、ジョージア州メイコンの綿畑のプランテーションで父(デビット・バーナー)と母(マライア・キャリー)と共に、綿を摘んでいた。しかしある日、全てが変わってしまう。黒人労働者を監視する白人の若い男が、畑に居た母の腕を掴み、小屋へと連れこんだ。それを黙って見てないといけなかった父。小屋では母の叫び声。まだ小さかったセシルには何の事かさっぱり分からなかったが、母が酷い目に遭っている事は分かった。監視員が戻ってくると、セシルは父に「どうするの?」と聞いてしまう。それをきっかけに父は監視員に立ち向かうが、監視員は何も言わずに父の頭に向けて一発銃弾を打ち込むだけだった。それを全て目撃していたのが、そのプランテーションの家長の妻であるアナベス(ヴァネッサ・レッドグレイヴ)だった。アナベスはセシルを外の厳しい労働「フィールド・○ガー」ではなく、家の小間使いである「ハウス・○ガー」にすると言い、セシルはアナベスから色々と執事について学んだ。青年になったセシルは、そこを出る事を決意する。母はその一件から、精神を病んでいた。アナベスは聖書を託す。中々、仕事を得られないセシル。歩くも歩くも仕事はない。窓際で見つけたケーキを見て、窓を割って、そのケーキを盗んでしまう。そのセシルを発見したのが、黒人執事のメイナード(クラレンス・ウィリアムス3世)。セシルの姿を見て察するメイナード。傷の手当をしてあげて、もうすぐ家の人たちが帰ってくる頃だから、その前に逃げろと言うメイナード。セシルは「執事の仕事が欲しい」と無理なお願いをする。メイナードは呆れたように「泥棒に仕事をやるってか?」と言うが、メイナードはそんなセシルを立派な執事に訓練する。メイナードにはワシントンDCで働くオファーがきていたが、「俺は年寄りだから」と、そのオファーをセシルに譲る。DCでは、一流ホテルの執事になったセシル。グロリア(オプラ・ウィンフリー)と結婚しており、2人の息子にも恵まれていた。ホテルでの勤務ぶりを見ていた人から、ホワイトハウスで働かないか?と電話が掛かってきて、ホワイトハウスで働く事になるのだった... という事で、ホワイトハウスで働く事になるまでもかなり濃厚。本題はそこからですからね!予告編を見たときに、執事のセシル、そして息子はブラックパンサーという事で、公民権運動を扱いながら、両極端の2人を描いているのは分かった。多分「フォレスト・ガンプ」の黒人版になるんじゃないかなーとは思っていた。確かにそんな感じはする。セシルがホワイトハウスで働くようになった時の晩餐会で、セシルは白人の為に椅子を引く。その映像をオーバーラップしながら、息子ルイス(デビット・オイェロウォ)は、フィスク大に進学しSNCCに傾倒して、シットイン運動に参加する。ルイスや他のSNCCは様々な暴力にも椅子から動かずにじっと耐えている姿が対照的である。セシルがフォレスト・ガンプ的なアメリカの歴史を体現するなら、ルイスはジェニー的な反体制側のアメリカの歴史を体現している。でもね、この映画は「フォレスト・ガンプ」とは違って男女間の関係ではなく、家族関係なので、これがまた深い。しかもセシルには次男坊のチャーリー(イライジャ・ケリー)が居る。彼はセシルとルイスのような間逆な人生ではなく、別のアメリカの歴史を体現しているのだ。 そしてセシルがホワイトハウスで大統領に従えているので、その大統領を通しての公民権運動が見られるのも面白い。セシルは大統領が側近達と公民権運動について語っている時、同じ部屋に居るのだ。しかし執事達は「政治には無関心でいろ、何も聞くな、何も見るな、何も言うな」と言われている。そんなシーンに大統領の性格が見え隠れする。ニクソンは副大統領時代から本当にむかつく男だしw、ジョンソンは思っている以上に豪快で犬好き、ジョン・F・ケネディはやっぱり素敵。セシルがホワイトハウスで働いていた時にも大統領だった、フォードとカーターはやっぱりキャラが薄いらしく、劇中でも実際の映像がちょっと流れるくらいw。 着地点がオバマ大統領になるだろうなーとは見る前から思っていた。泣かないど!と思っていたけど、やっぱり泣いちゃうね。 さすがにレーガンを、イギリス出身のアラン・リックマン(ドクター・ラザラス!!)が演じるのは無理があったかな?リックマン、あの喋り方だったし!!無理があるといえば、そんなゴリゴリの共和党のレーガンの妻ナンシーを、ハリウッド最強のゴリゴリ反体制派であるジェーン・フォンダが演じている事!!ゴリゴリの共和党員が、みんなネットでも怒ってるわい!!そんなショックな感じは、リー・ダニエルズぽいね。ジョン・キューザックのニクソンもミスキャスティングかなー。「ペーパーボーイ」の時も書いたけど、キューザックは泣き顔だから、悪役はやっぱり似合わないよ。キューザックに似合うのは、大きなステレオだけ!! というか、この映画本当にリー・ダニエルズが作ったんですか!という程に、彼色を抑えているのが驚き。リー・ダニエルズぽいのは、マライア・キャリーとレニー・クラビッツとデビット・バーナーというミュージシャン組と、そのジェーン・フォンダのキャスティングくらい。あの「The Paperboy / ペーパーボーイ 真夏の引力 (2012)」のリー・ダニエルズですか?と思ってしまう程。こういう感じの映画も作れるんだー!と関心した位。 所で、デビット・オイェロウォが演じたルイスという役は、ジョン・ルイスがモデルじゃないかと思う。ジョン・ルイスは劇中のようにジム・ローソンに師事して、非暴力を学んだ。でも途中からは、ジョン・ルイスと同じSNCCに居ながら、「ブラック・パワー」で反対側の人間になってしまったストークリー・カーマイケルぽい。でもまたジョン・ルイスになって下院議員に立候補したりしてるよね。今、ちょうどジョン・ルイスの本読んでいるから、タイミング良い!ルイスは、マルコムXのスピーチツアーに参加しているけど、ジョン・ルイスはたまたまアフリカ滞在中にマルコムXと出会っていて、その時に親交を深めて、自分の集会でスピーチしてもらっている事もあるんだよ。でもジョン・ルイスは、マルコムのOAAUやブラック・パンサー党には傾倒していないけどね。 まあ泣いた。主役のフォレスト・ウィッテカーや久々に女優に復帰したオプラ・ウィンフリー、息子のデビット・オイェロウォが素晴らしいね。オプラは、笑えるシーンも多くていいね。最後まで笑わせてくれた。フォレストもコスプレで笑わせてくれた。あのシーン、かなり笑えるんだけど、笑えたからこそ(゚△゚;)え?ってなるね。悲しいわー。私は、キューバ・グッディング・ジュニアもかなり好きだわー。何か一時期やばかったけど、「Red Tails / 日本未公開 (2012)」の時といい、いい感じ!支える兄貴的な演技が良いね。お菓子だかパンを作っているシーンで、生地で「おっぱい!」ってキューバが中学生みたいに喜んで作っているシーンが好き。キューバの役はリーダー役だからね、彼がそんな事やると面白い。またそんなほのぼのしたシーンからの、ニクソン登場...みたいな。(゚△゚;)え?ってなるよ。 この映画は本当にホワイトハウスで8人の大統領の執事となったユージン・アレンという人がモデルとなっている作品。でも、先に書いたようにルイスはジョン・ルイスぽいし、マライア・キャリーの役はマルコムXの母親ぽいし、オプラが演じた妻や次男坊のチャーリーは、それこそ名前や顔も知らないけれど、アメリカの歴史を作った人々を描いていると思う。色んな人のアメリカの歴史が詰まっている。ちなみに私が見た時の観客は、白人の人がちょっと多めだったけど、いつもよりは黒人観客の数も多かった。終わった後に拍手が起こった!!アメリカでは今までそれこそ何本の映画を見たのか分からないけど、終わった後に拍手が起こるのは意外と稀で年に1-2回あればいい方。無い年が多いかも?覚えている限りだと、最後は「Notorious / ノトーリアスB.I.G. (2009)」。 (1145本目) |
●● トリビア 「プレシャス」にて注目を集めたリー・ダニエルズ監督作品。歴代の大統領に仕えたバトラーのセシル・ゲインズの主役には「ラストキング・オブ・スコットランド」にてオスカーの主演男優賞を獲得したフォレスト・ウィッテカー。ゲインズの妻を演じるのがオプラ・ウィンフリー。ジェーン・フォンダやメリッサ・レオなどの大物から、リー・ダニエルズ作品では御なじみのミュージシャンでもあるレニー・クラビッツやマライア・キャリーやデビッド・バーナーも参加。「レッド・テイルズ」でも共演したキューバ・グッディング・ジュニアとテレンス・ハワードがこちらにも参加。ノミネートも含めた黒人オスカー俳優がウィッテカー、ウィンフリー、キューバ・グッディング・ジュニア、テレンス・ハワードと4人も揃っている! 正確なタイトルは「Lee Daniels' The Butler」。公開1ヶ月となった時に、「The Butler」という映画タイトルの権利を持っているWBが訴えて、無理矢理変えさせた為にタイトルに監督の名前「リー・ダニエルズの」に変更になった。 |
●● その他 |
●● 受賞歴 * The BEST OF SOUL2013 Won Best Male Supporting Performance of the Year : Cuba Gooding Jr. 2013 映画秘宝 私が選んだベスト10 2013年度1位 2013 映画秘宝 私が選んだベストガイ :フォレスト・ウィッテカー 2013 映画秘宝 私が選んだベストガール : オプラ・ウィンフリー |
●● サウンドトラック Soundtracks not available |
●● 関連記事 |
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●● インフォサイト http://www.imdb.com/title/tt1327773/http://en.wikipedia.org/wiki/The_Butler http://www.allcinema.net/prog/show_c.php?num_c=347351 |
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