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●● レビュー "Dear White People... you know what, never mind"名門大学ウィンチェスター大学。そこにあるのが”黒人学生専用”のアームストロング/パーカー・ハウジング。専用というか、そのようになってしまっている。そこの寮長を決める選挙で、学生部長(デニス・ヘイスバート)の息子であるトロイ(ブランドン・P・ベル)が再選するだろうと思われていたが、「親愛なる白人の人々へ」という校内ラジオ番組を持っている過激派なサム(テッサ・トンプソン)がまさかの当選をしてしまった。そんなサムにライバル心を燃やしているのが、シカゴのゲトー出身ながら黒人嫌いなココ(ティオナ・パリス)が居た。そして黒人にも白人にも属さない黒人の同性愛者でみんなからのけ者にされているライオネル(タイラー・ジェームス・ウィリアムス)も居る。ココとトロイ、そして学校長の息子カートは、ハロウィンに黒人がテーマのパーティを開催することになったが... 80年代のスパイク・リーの『School Daze / スクール・デイズ (1988)』、90年代のジョン・シングルトンの『Higher Learning / ハイヤー・ラーニング (1995)』があったように、今はこの新進監督のジャスティン・シミエンの『Dear White People』がある。大学を舞台にした人種分離を鋭く皮肉っている作品だ。例えばスパイク・リーの『スクール・デイズ』は黒人大学の黒人の分離を皮肉っていたし、ジョン・シングルトンの『ハイヤー・ラーニング』は大学内の白人と黒人の分離を皮肉っていた。この作品は、実際に今起きている問題をそのまま映画にして皮肉っている。良い大学に黒人が行けば今でもアファーマティブ・アクションの恩恵だろ?と言われてしまう。色の白い女性は、黒人か白人かを選ばないといけない。ライオネルのように、見た目は黒人だけどどちらにも属せない人もいる。 この映画は黒人社会に潜んでいる問題を全て飲み込んで新しい声として提唱している。そこには鋭い皮肉もあれば、軽いジョークもある。そして白人と黒人の間に生まれる衝突もあるけれど、万人が共感出来る部分もある。親愛なる白人の人々へ...たまにはそんな新しい声聞いてくれるかな? (Reviewed >> 2/4/15:DVDにて鑑賞) |
●● 100本映画 時代を反映する映画。よっぽどの映画じゃない限り、大抵はその役割を映画は果たしている。しかし時代の代表となるような映画となると、限られてくる。その限られたものが、「名作」だの「佳作」だの「金字塔」だの言われる。このジャスティン・シミエンという、多分99%の人々が初めて聞く名前の監督が作ったこの作品も、後にその限られたものの仲間入りをするだろう。今日はそんな良い予感しかしない映画を。ウィンチェスター大学。学業でトップの名門大学だ。2年生のライオネル(タイラー・ジェームス・ウィリアムス)は、どこにも属さない孤立した学生だった。寮でもイジメられ、追い出されたばかり。同性愛者である事もそのイジメの一因のようだ。その大学で「親愛なる白人の人々へ」という白人を挑発する過激なラジオのDJをしているのが3年生のサム(テッサ・トンプソン)。彼女は「エボニーとアイビー」という本を学内で自主出版もしていて、過激派の黒人の取り巻きも多く、彼等に慕われている。そしてリアリティ番組の出演を取り付けようとしているのが、2年生のココ(ティオナ・パリス)。彼女はシカゴの黒人地区サウスサイド出身だが、同じ黒人とはあまりつるまないで、白人とつるもうとする。彼女はビデオブログをやっているが、あまり人気ではなく、リアリティ番組のプロデューサーも躊躇している。サムの人気に嫉妬している部分もあるようだ。そして3年生のトロイ(ブランドン・P・ベル)は、この大学の学生部長(デニス・ヘイスバート)の息子で、ルックスにもカリスマにも恵まれ、政策科学を学び、ほぼ黒人生徒専用となっているアームストロング/パーカー・ハウジングの寮長。以前はサムと付き合っていた事もあるようだが、今は政治的にも学校長の娘で白人のソフィアと付き合っている。けど隠れてマリファナ吸うのが楽しみ。そんな4人が居る大学で、ソフィアの兄で白人用寮長でもあるカートとココとトロイが開催した人種差別なパーティのせいで人種摩擦が起き、暴動へと発展していくが... というこの映画を観て、スパイク・リーの『School Daze / スクール・デイズ (1988)』とジョン・シングルトンの『Higher Learning / ハイヤー・ラーニング (1995)』を触れなかったら野暮だろう。スパイク・リーの『スクール・デイズ』は、スパイクにとって初のメジャー映画会社と共に制作し、スパイクが一気にスターダムを駆け上がった作品。黒人大学を舞台に、黒人の間に存在する色の違いによる偏見や衝突を皮肉った面白い作品だ。この『Dear White People』も同じイズムを感じる。黒人の間に存在する色の違いによる偏見や衝突。そしてジョン・シングルトンの『ハイヤー・ラーニング』は大きな大学を舞台に、黒人学生や白人学生やアジア系学生などが構内ではっきりと人種によって分離していて、それによって起きた衝突を描いた作品だった。この『Dear White People』もそうなのだ。1950年代からの公民権運動やマイノリティが優遇されるアファーマティブ・アクションなどにより、黒人学生の数は増え、同じ学校で学んでいるかもしれないが、大学の施設は共有するも、人種ではっきりと分離されてしまうのだった。いくつかの寮があるが、その寮もいつからか人種で分離されているのだった。で、この映画の面白さは、ライオネルという役だ。彼は大きなアフロが目立つ全くの黒人である。色だって薄い訳じゃない。変な言い方だが、平均的な黒さである。しかし、ライオネルは黒人側にも白人側にもイジメられて孤立している。ライオネルは、所謂引っ込み思案とか喧嘩が弱いとかそういう感じではないのだ。割りとハッキリ意見も言える。でも黒人が普通嫌がる事(アフロをいじられるなど)は、白人にはっきり言えない。逆に言えば、黒人にも白人にもどっちつかずのライオネルに両者がイライラしている感じなのだ。そんなライオネルが心を許したのが、同じく新聞記事を書く、大学新聞の編集長の白人だった。編集長は野心家だった。そんなライオネルの心を弄んでしまうのだけど... で、ライオネルはどうするのか!も見もの。最後のクレジットの部分でも分かるように、実際に大学で起きた出来事を物語に取り入れているのも最高だ。だからこそ時代が見えてくる。 と、いろんな捻りがあり、とてもウィットに富んでいる最高の作品だった。ちょっと難しい所もあるかもだけど、分かると最高に面白い。「グレムリンは大声でうるさいし、スラングは使うし、フライドチキン中毒だし、髪が濡れるとビビって大騒ぎするので黒人でしょ?」と、グレムリンは郊外に住む白人の恐怖であるという15ページにも及ぶ論文が書けるサムが面白い。 という訳で、2010年代の黒人映画の代表作の一つになる事は間違いない! (1331本目) |
●● トリビア 長編作品デビューのジャスティン・シミエンの風刺コメディ。サンダンス映画祭にて公開され、審査員特別賞(ブレイクスルー・タレント賞)を受賞した。クリス・ロックの中学生時代を描いたシットコム「Everybody Hate Chris」にて、クリス・ロックを演じていたタイラー・ジェームス・ウィリアムスが主演。 |
●● その他 |
●● 受賞歴 * The BEST OF SOUL2014 Won Best Female Supporting Performance of the Year : Tessa Thompson / テッサ・トンプソン 2015 映画秘宝 私が選んだベスト10 2015年度8位 * Palm Springs International Film Festival 2014 Won Directors to Watch : Justin Simien * Sundance Film Festival 2014 Won Special Jury Prize Dramatic : Justin Simien (Breakthrough Talent) 2014 Nominated Grand Jury Prize Dramatic : Justin Simien |
●● サウンドトラック Soundtracks not available |
●● 関連記事 * 映画秘宝 2015年 5月号 この映画を観せろ!BEST70!! |
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●● インフォサイト http://www.imdb.com/title/tt2235108/http://en.wikipedia.org/wiki/Dear_White_People http://www.allcinema.net/prog/show_c.php?num_c=359681 |
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