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●● レビュー Sarcasticジェフ・ガーバー(ゴッドフリー・ケンブリッジ)は、毎朝通勤時にはバスとの競走を楽しみにしていて、馴染みのバス乗客もそれを楽しみにしており、町ではちょっと知られた存在だった。保険会社のセールスをしていて、妻(エステル・パーソンズ)と子供2人に恵まれ、割りと裕福な地域で生活している。ところが、ある日起きたら黒人になっていたのだった... ハーマン・ローチャー原作の映画化。彼の有名な「おもいでの夏」とは、また全然違う社会派作品。スタジオはメルヴィン・ヴァン・ピープルスに監督を依頼したものの、主役には白人のジャック・レモンのような俳優を考えていたようだ。所が、メルヴィンは黒人俳優のゴッドフリー・ケンブリッジを起用した。黒塗りをしたブラックフェイスの映画が何より嫌いだったメルヴィンの意地だろう。 私はカフカの「変身」を思い出す。朝起きたら虫になっていた男の物語。人間が突然虫になっていたら悲劇だ。所が、アメリカの発想では白人が黒人になってしまった事が悲劇なのだ。しかも白人の時には、黒人に対して意識もせずに差別をしていた側。所が、黒人になった事で周りの反応が変わっていく事に戸惑う。「皮膚の皮一枚の違いじゃないか!」と自分の置かれた待遇に怒りを覚えるも、最後には「I accepted」と言い黒人である事を受け入れる。そして今までの自分を反省する。 全てが皮肉的。白人が黒人を「皮膚1枚の差」で差別する事に対しての皮肉、そして黒人が多くのヘアプロダクト等で白人の真似をする事への皮肉。黒人暴動に何も出来なかったアメリカ社会への皮肉。その皮肉も、メルヴィンの手にかかると、斬新なコメディに仕上がっていて説教臭くなく見る者を飽きさせない。誰も朝礼の校長のつまらない説教は聞かない。けれど、生徒の輪に入ってくる先生の話には耳を傾ける。メルヴィンはいつもそっちで攻めてくる。メルヴィンらしい冒頭からのお洒落なカメラワークとタイトルの出し方、そして音楽の粋な使い方等は、彼の特権。そんな悲劇と喜劇を一度に演じきったゴッドフリー・ケンブリッジの演技も忘れられない。 悲劇と喜劇は紙一重。皮肉と説教も紙一重なのだ。 (Reviewed >> 3/18/02、06/02/07:VHS&DVDにて鑑賞) |
●● 100本映画 Not Yet |
●● トリビア 伝説的な監督であるメルビン・ヴァン・ピープルスが、大手の映画製作会社のコロンビアで制作した皮肉的なコメディ映画。主演には「Cotton Comes to Harlem/ロールスロイスに銀の銃」のゴッドフリー・ケンブリッジ。70年代のアクション映画「Dolemite」等に多数出演・監督していたダービル・マーティンや、クラシック映画の喜劇役者のマンタン・モアランドが出演。「おもいでの夏」の脚本などで知られるハーマン・ローチャーの「The Night the Sun Came out on Happy Hollow Lane」が原作で、本作でも脚本と撮影技師を担当している。 |
●● その他 |
●● 受賞歴 >> BAFTA Awards 1971 Nominated BAFTA Film Award Best Supporting Actress : Estelle Parsons |
●● サウンドトラック Soundtracks not available |
●● 関連記事 * 名作映画鑑賞会 in 京都みなみ会館での上映にあわせ、パンフレットに寄稿。(12/03/2021) |
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●● インフォサイト http://imdb.com/title/tt0066550/http://en.wikipedia.org/wiki/Watermelon_Man_%28film%29 https://www.allcinema.net/cinema/380350 |
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